概要
福島第一原子力発電所は、東日本大震災の振動には耐えましたが、防波堤を超えた津波よる被害を受けました。設備内に侵入した海水が原発の冷却設備に重大な損傷を与え、炉心の核燃料が溶融するに至りました。溶融した核燃料は炉心から流出し、格納容器内に燃料デブリとして拡散したと考えられています。今後の廃炉計画を立てる上で重要となる燃料デブリの分布を特定することを目的とし、高放射線下でも耐えうるガンマ線センサーシステムを開発しました。
アプローチ
福島第一原子力発電所の事故以来、Createc社のシステムを用いた線量調査並びに放射能解析の実績をベースに、新たな高耐放射線のガンマ線センサーシステムの開発を三菱重工業株式会社から受託しました。
予想される高線量を模した環境下で開発及び試験を重ねたコンポーネントを用い、自社のN-Visage®技術をベースにこの画期的システムが構築されました。
また、本システムを現場適用するうえで、遠隔操作ロボットを用い、格納容器に通じる極めて狭隘なペネトレーションからセンサーを持ち込むことが求められています。
ガンマカメラ、ソナー、ビデオおよび斬新なストラクチャードライトモジュールから収集されたデータは、当システム(MATLABを用いている)により統合・分析され、調査対象の放射能分布を出力するよう設計されています。また、本システムはGraphical user interface (GUI)を用いて操作を可能としています。
今後の展開
実戦配備に向け、今後は遠隔操作ロボットとの統合、並びにオペレーターへのトレーニングを予定しています。既に英国の照射設備(Harwell)におけるアクティブ試験が終了しており、22メートル長を有するBoom型アームの先端に装着する準備が整いました。
また、本システムは福島第一における実戦配備に向け、GUIの多言語化対応等の最終調整を進めております。
更に、本システムの基本技術は英国内の原子力発電施設内の高放射線環境への適用も可能であると期待されています。